あわい (revised:11月23日)

夜明けはいけない。

近くの神社で、太鼓が鳴る。

また時間の流れが押し寄せる。

 

眠れない夜の終わりや、

仕事に向けた朝の始まり、

あちらとこちらの混じり合う場所で

 

さ、区切りなさいと

背中を一撫でし、杭を打つように

太鼓が鳴る。

 

あの夜明けにも

私が眠りに落ちてすぐ

鳴り響いたのだ、太鼓が。

 

夜と朝の隙間で、

闇と光のあわいで、

 

私の魂がとろとろと境目をなくした時、

痩せつくした猫の魂がとうとう

広々とした宙を目指すと決意した時、

肉体を超えて溶け合えるその一瞬

 

「今です!」

 どどん、どん、どーん、どどん、

 

祝福の響きがこの部屋を覆ったのだ。

きっと。

 

溶け合い、そしてまた

それぞれの道へと背中を押された。

空へ。

朝へ。

 

 

夜明けはいけない。

埋められない空間を一瞥する。

 

あの瞬間を、どこに片付けておこうか。

なぜ永遠をここに結びつけていられないのだ、

浮かぶ赤い風船のひものように。

 

ねぎらいなど要るものか。

苦しみ合い、這いずり回る無限の闇にもぐると、

わたしは

いつもそうだ。

あの時も。

また別の、あの時も。

 

そんなに解決したかったか。

そんなに抜け出したかったか。

あそこには歪に寄り添う安らぎが、一欠片ほどならあったのに。

 

 

夜明けはいけない。

間違ってはいませんでしたよと押し出された朝、

さて、どこへゆこう。

 

時間など無いと知っておきながら、

時間の彼方に、見送ることしかできなかったではないか、

あんなに愛おしかったものを。

横たわるからだを。

愛し、愛された証を。

 

夜明けはいけない。

また神社の太鼓が鳴る。

 

 

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