内省バイク2 〜楽しむ記憶〜

 こんなにもバイクに向いてないまま突入した、小型バイク教習。とにかくそのプロセスでの経験、発見を、メモっていくことにした。

 すべての、自分を決めつけてしまいがちなヒトに捧ぐ。自分の内側に目を向けていこうぜ。壁は爪でカリカリほじくって、穴開けていこうぜ。ゴーゴーレッツゴー仮面ライダー。ライダー、ライダー。

 

内省バイク1  〜私より速い私〜

 

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【半世紀前の記憶と、わたくし】

 初回。私を乗せた機械が、恐る恐るの私の指示で動き始める。ゆるゆると動きだして、わぁ〜怖いけど楽しい・・・と思った瞬間湧き上がったのは、ゴーカートの感覚。

 ゴーカートって、今もあるのか?小さい頃に一度だけ、一つ年上の従姉と、貝塚公園という大きめの平和な場所で乗ったことがある。車型の枠に二人並んで座って、丸いハンドルで向きを変えながら進む、足漕ぎ四輪車だな。黄色だった気がする。いや、赤だったかもしれん。

 あの、アスファルトの地面が、見慣れているよりちょっとだけ速く流れて、無機的な質感の物に自分が運ばれていく感じ。親戚とは大きくなるにつれシラけた関係になっていたけれど、従姉とゆらゆらむちゃむちゃしながら運転したゴーカートは、楽しい記憶だったんだなぁ。

 そして、あの足漕ぎで出した速度が、楽しめる限界だったんだなぁ(笑)。

 

 調べてみたら、まだあった。貝塚公園も、子供用のゴーカート乗り場も。

 あまりに景色が変わってない。飛行機とか電車の車両とか、遊具のいくつかは私も見覚えがあるぞ。古すぎる。昭和中頃で時が止まっている。だいじょうぶか?

 でもゴーカートは違うと思うなー、子供が一人ずつ乗っている。

 

 (お写真、『よかとこBY 福岡県徹底探検隊』より拝借!)

 私が乗ったのは、ぜったい二人乗りだった。どうでもいいですけど。ばあちゃんに連れて行ってもらった従姉妹どうし四人が、私たち二人と、私と同い年の子と一つ年下の子がそれぞれペアになって、乗ったんだ。私たちの方がゆっくりこいだ。どうでもいいですけど。どうでもいいことほど、ムキになるぜ。

 

【ワカモノたちと、わたくし】

 初回の教習がワケもわからんまま終わってバイクの教習コースから学校の建物まで戻っていく車の中のこと。まったく同じほんの数時間前に入校したワカモノ男子の一人が、何人かいた中でわざわざ私に話しかけてくれた。

ワカモノ「バイク、初めて乗ったんですか?」

わたし 「初めて!」

ワカモノ「楽しそうに乗ってましたねー!」

わたし 「楽しかったっ!(満面の笑み)」

 まるで公園デビューしたお父さんがよその子も温かく見守って話しかけくれてたかのような、大人目線の優しさ。

 

 車を降りて、バイク教習生用のプロテクター置き場で、肘とスネ膝と胸部のプロテクターを外していたら、べつの同期のワカモノ2に、また話しかけられた。

ワカモノ2「なんでバイクに乗ろうと思ったんですか?」

わたし  「うーん、なんとなく、乗りたくなった感じ。マタガルやつに。」

ワカモノ2「似合いますね!すごいチャレンジ精神ですね!」

 

 ワカモノ2は、僕ヤマモトです、と自ら名乗って、私の名前も聞いてくれて、それから時々顔を合わすと、進み具合は?とかしゃべるようになった。補習だらけの私の教習原簿(カルテみたいなやつ)を見せると、ヤマモトくんは、自分は補修無しで順調に進んでいる中「そんなに遅くもないですよ!」とか言うてくれたりして、そんな彼はもう、卒業したはず(笑)。

 

 とにかくありがとう、ワカモノたちよ。あんたたちは自分のバイク欲を抱えつつ、お父さんのように、また、相手を立てるインタビュアーのように、私を温かい目でチラ見してくれて、ほんとに、日本の未来は明るいよ。

 

 そして私は気がついた。「楽しそうでしたね」・・・聞き覚えがあるなー、と。3年少し前から始めたフラメンコで言われ続けていたのと、おんなじ言い方なのだった。

 

 

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