アニマルコミュニケーション 20(火葬の日のあれこれ(3) おらくザウルス)

 

【整理しますと・・・】

 メールを読んでたかが知ったことは、おらくの魂がたかに会いに行っていた、というトンデモ話と、それを ”ヒーリング” などという ”目に見えないこと” を得意とする人が伝えてきた、というトンデモ話。そして私がそういうトンデモの存在を疑わないトンデモだったからこそ、その連絡が自分のところに来たのだということ。

 ある時、彼は私に「その、最近、お前が ”傾倒” している、そういう世界のこと」という言い方をしたことすらある。だから、メールを読んでどういう反応をするつもりなのか、わからないと言えば全くわからないことではあった。

 

【私は知っている】

 たかはおらくの骨壷の前で、そんなトンデモ話を否定しないどころか、その話を補強し始めた。おらくが膝に乗っている夢は何度も見ていたこと、それがいつも、重さや温もりもあってとってもリアルだったこと。

 そして、自分はたしかに目に見えないものは信じないという言い方をしたけれど、と前置きしてから、「おらくは、幸せな人生だった、って言ってた?」とアニマルコミュニケーションの方についてもまた、否定どころか、その中でおらくの言ったことを、知りたがった。

 それは、私が今までの暮らしの選択が間違っていなかったと聞きたくて、おらくとふるむそれぞれに、あの頃は楽しかった?と確認したのと全く同じ意識だったはずだ。

 

 私は、たかが本当は「"目に見えないもの" は信じない」どころか、実は私と同じ感覚を持っている人間だと、知っている。もちろん。

 

 「・・・・・・・。」

 

【ズレの原理を、少し話そう】

 ”目に見えないもの” の方が圧倒的に多いこのリアルな世界に、私たちは一緒にいたはずだった。けれど、彼はなにかと私を攻撃するようになった。それは、私を拒絶していないと、自分自身によって自分自身が押しつぶされてしまうからだ。

 彼は自分を肯定できる意識がひどく小さかった。自分を許せていない。だから他者をも許せない。実は、多くの人がそうだろう。私もそうだ。違いは、その自覚の度合いに過ぎない。(抽象的なリクツに終始しないよう、ここに具体的なことを詳しく書いていたのだけれど、書き進めるほどに救いがなくなって耐えられなくなったので、全削除。)

 

【自分の世界で起こしていること】

 他者に厳しい人というのは、職場の人間に批判的でいるところまでで止めていられれば、無能な人間とは違って自分は仕事をこなせる、というようなプライドの高い自分像を持つだけで済むのかもしれない。

 けれど実際には深いところでの自己肯定ができていないのだから、等身大ではいられない。彼の場合はやがて一緒に暮らす私の立場をおそろしく相対的に肥大化させることになっていった。次第に自己卑下がひどくなり、私の言葉にピリピリと反応し、少し意見が対立する気配が見えるとすぐ吐くようにまでなった。

 「私はあなたの敵ではない。」「あなたの周りに敵はいない。」とまで、何度も言ったし、表現を選び尽くした長い長い文章を徹夜で書いて送ったことも、一度や二度ではない。

 それでも肥大化した私に彼は圧迫され、自分を保とうとするほどに、私の言動をそう簡単に認めるわけにはいかなくなる。私を否定する部分が増えれば、自分と共通した部分まで否定せざるを得なくなる。自ら生んだ、必然的な矛盾だ。

 まるで自らの免疫機能が自身を攻撃してアレルギーやアトピーが悪化してゆくのを見ているようだった。彼は攻撃対象の私が消えた今、以前よりも自分自身を攻撃する機会を増やしていっているところなのかもしれない。出て行ってくださいと言った日から、私はもはや関与してはいないが、いずれにせよ自分で気づくしかなく、一人一人の人生とは、そのための道のりなのだ。

 

【誘う&ノル呼吸】

 たかが、おらくの骨壷の前でトンデモ話を全面肯定、そしてアニマルコミュニケーションのおらくの言葉までもを知ろうとして、思わず顔を私の方に向けていたその時の姿勢は、久しぶりに、そんな攻撃の頑なさを脱いだ、私が仲良くできるバージョンの、たかだった。

 

 骨壷を見てもらったらもう別にやることもないし、間が持たない。「おらくの骨、見る〜?」と言ったら、「それ、ワルい仲間が誘うやつやん」と、ノってきた。

 

【結局、いっしょに遊びたい】

 それから禁断の遊びを始めた。

 私たちはいくつもの過去世で一緒にいたが、ある過去世でもこうやって、私が面白い遊びを思いついては先に立ち、たかがそれを面白がってついてきて、いつもふたりで遊んでいたことがある。その過去世を見てもらった話をした時にも、他の過去世の話と同様、たかは自然に受け入れた。

 ほかにも、刀を持って背中を合わせて、互いの背後を守り合いながら戦う仲だったという過去世を見てもらったこともあったが、それを見てもらうよりずっと以前に、ある朝たかの方から驚いたような表情で言ってきたリアルな夢の話が、後で思えば、その過去生と同じような雰囲気だった。

 なにか二人で戦っていて、洞穴みたいなところに逃げ込んで、最後に私に何か大事なものを渡して自分が死んだところで目が覚めた、と。ストーリー性のある夢は何らかの過去生の記憶の断片であることが多いらしいが、たかは本当に、いろいろとリアルなストーリーの夢を見るタイプだったし、起きている時もそういう夢をいつも意識しながら生活しているようなところがあった。

 見えないものは信じない、とか、どの口が言うかな、まったく。┐(´д`)┌ヤレヤレ

 

 結局、こうして挙句の果てに、日曜深夜、今生でもまたワクワクしながら私たちは遊び始めた。

 

 青い薔薇のようなカバーの蝶々結びを解いて、十字に留めて封印してある長いセロテープを剥がして、蓋を開けた。ほんの何時間か前に部位を説明してもらいながら順序よく入れていった骨を、逆戻しで今度は私が説明しながら、テーブルの上に並べていく。

 

【おらくザウルス】

おらくザウルス

 この日、朝にはベランダの花たちに飾ってもらってやわらかいままの耳とふさふさの尻尾を持っていたおらくは、夜にはこんな見事な、かわいい恐竜になった。

 一つ一つの骨としては、かなり違う位置に並べてしまっていたりするのだろうなぁ・・・左脇の下のあたりに、どこにあったかわからない「余り」のパーツを集めてみました。

 

 火葬場の担当の人が、「しっかりした、キレイな骨ですね」とか、「これは前足です。手の部分が長い、スタイルの良い猫ちゃんですね」とか褒めてくださって、なんかお骨を拾いながらちょっと嬉しかった。

 言われたとおり、14年前の、悲しみに打ちひしがれながら拾い上げたあさひの骨は、もっともっと脆くて崩れやすかったような気がする。おらくの骨は、箸に当たってカリカリ音がしたし、拾い上げやすかった。それに、おらくは確かに、スラリとした前足が華奢でかっこよくて、なんかモデルみたいで羨ましいなぁ、とよく思っていた。

 

<昔のいわゆる「コンパニ立ち」的な。>

 

 <手が長〜い!>

 <手が長〜い!笑>

 <おらくが長〜い!笑>

 

 いろんな猫を見ていて当然の動物病院のお医者さんに、以前おらくの尻尾を「おお、立派な尻尾だねぇ」と褒めてもらったことがあって、その時も嬉しかったけれど、骨になっても褒められると嬉しいものなのだなぁ。いっぱいペットの骨を見ている人が言うのだから、骨のキレイさも丈夫さも、スタイルの良さも、まちがいない!うれしい!

 

 何でもかんでもかじりまくったかわいい牙と強力な顎。甘噛みを知らない、全力の甘噛みは、痛かった。

 骨壷に入れた時には、片方は目のところまで形が残っていたけれど、この時にはもう崩れてしまっていた。牙があるほう、上顎に見える穴は、鼻の穴よね、おらく。詰まりに詰まって黄色く粘性の高い鼻水が出続けた、その出口はこんなに小さい穴だったのだなあ。

 おらくの小さい鼻の奥の奥の空間、鼻腔を思い描いては、粘膜の過剰な反応よどうぞおさまってください、と光が通って風が流れていくイメージを送り続けた。小説か何かで読んで思い描いておいた現地に行って実際の景色を見る感覚は、こういう感じなのかもしれない。ツワモノどもが夢の跡。

 

 呼吸が苦しすぎて荒い息をし続けたせいで、レントゲンで見ると肋骨が自然に折れた痕があると言われた1年前。こんなに細い肋骨で、肺を守っていたんだねえ。なんて愛らしい、健気な細さよ。

 

 脊椎、腰椎は、コツコツの体を撫でるたびに毛の上からでも形がわかるようになっていた。特に10月に入ってから、ケースの中でガタっと音がすることが多くなった。その度慌てて目をやると、おらくが横になろうとしては力なくドタっと毛布の上に体を投げ出すので、その勢いで背骨がケースの壁に当たってしまう音だった。

 守る肉がなくなっていて痛かったことだろう。ただゆっくりと体を横たえようとするにも、それをコントロールする足腰の力が要るのだと知ったよ、おらく。

 

 おらくの尻尾は、カギ型ではなく完全なまっすぐタイプだった。よく、尻尾を持っては、その一番先を人差し指の腹でちょんちょんとさわっていたものだけれど、毛に包まれた先っちょは、けっこうツンツンと尖ってすらいるほどに細かった気がする。この骨の方が直径が太い気がするのだけれど、思い違いか?それとも尻尾の先っちょって、もっと細くなった軟骨なのか?それが、死後硬直に至らない何かだったりするのかもしれない。謎のまま、ほっておこう。(→「アニマルコミュニケーション23(しっぽの件、つながる日常)」で、少しだけ推理してみた)

 爪は焼けてしまうけれど、こうして残っているのは、爪の骨。

輪になって、躍らせてみました。

 この長い骨が、火葬場の人に誉められた、スタイルよいポイントとなる前足部分で、ひとでいう手の甲の部分に見える手首の先の骨に当たるところだそうな。このひとたちの足は、常に爪先立ちして立っているような状態だからね。ほほう。

 

 そして、女帝おらくの中の喉仏さまと、そのお説教を聞いておののく村の背骨のひとり。

 

 この骨たちはやがて土に還すから、この村の方々もね、おらくの光の国でまた楽しくやってくださいな。

 

 始めは自分の細い箸で丁寧に挟んで並べていたけれど、だんだん手で直接サクサクと動かし始めた。私が指先の粉をパンパン、と払うたび、たかが笑った。

 

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アニマルコミュニケーション19(火葬の日のあれこれ(2) 見えないリアル)

 

 アニマルコミュニケーション21(おらくサポートオールスターズ(1) )