夜明けはいけない。
近くの神社で、太鼓が鳴る。
また時間の流れが押し寄せる。
眠れない夜の終わりや、
仕事に向けた朝の始まり、
あちらとこちらの混じり合う場所に
印をつけ、杭を打つように
太鼓が鳴る。
あの夜明けにも
私が眠りに落ちてすぐ
きっと鳴り響いたのだ、太鼓が。
朝と夜の隙間で、
闇が光と入れ替わるあわいで、
私の魂がとろとろと境目を無くした時
おらくの魂がとうとう
広々とした宙を目指すと決意した時
「今だ!」
肉体を超えて溶け合えるその一瞬に、
どどん、どん、どーん、どどん、
祝福の響きがこの部屋を覆ったのだ。
きっと。
夜明けはいけない。
埋められない空間を一瞥する。
あの瞬間を、どこに片付けておこうか。
なぜ永遠をここに結びつけていられないのだ、
浮かぶ赤い風船のひものように。
時間など無いと知っておきながら、
時間の彼方に、見送ることしかできなかったではないか、
あんなに愛おしかったものを。
夜明けはいけない。
また神社の太鼓が鳴る。
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