今年の桜

ただでさえ妖気を発する桜たち。

今年は、人が寄りつかない桜だった。

散ってしまった後になって振り返ると、なおさら

季節ごと、すべて幻想のよう。

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非常事態とか宣言されたりするよりも前。

花見客は必ずいたはずの、桜満開の冷泉公園近く、

すでに人影はまばら。皆どこへ消えたのだ?

私はその時、帰宅中。夕方。

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うちに向かう歩道の先に、2軒並んだ飲食店の前、

急場仕立ての手書きのテイクアウトの札と台を並べて

マスクをつけた店員さんが「テイクアウトありまーす!」と叫んでいる。

ずいぶん手前から感じる「人が来る・・・!」という視線。

 

それ自体が虚しくて、いったんうつむいて通り過ぎ、

でも、だいぶ行ってから、引き返した。

「・・・なんか下さい。」

 

向かって右の店に、じゃあ、キーマカレーを。

うどん屋に、カレーとかあったのか)

左の店には、じゃあ、焼き鳥5本セットを。

「店の中で焼いて来ます、10分ぐらい待ってください」

(テイクアウトの要領、ゼロ)

 

じゃあ、待っている間、回れ右、

立ってる店員さんたちと一緒になって叫んだ。

「テイクアウトありまーす!」

人影まばらな向こう岸の歩道に向けて。

お櫛田さんの桜が、違う次元から優雅に舞い散る花曇り。

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今年の桜は、誰の桜だ

あの、お供え籠のように広げた月は、いったい誰の満月だ

 

私たちは、思い出した

花は ただ花なのだ

月は ただ月なのだ

今も むかしも 来年も

 

私はとうとう、歌い出した

人は 人であればよい

嘘は 崩れていけばよい

やりなおせるなら 泣けばよい

戻らぬものは まぶたの中

こぼれ落ちたら 土に返るさ

土に還るさ 土にかえるさ

 

暗く湿った 根の先に

溜めてしまった 毒のようなもの

涙のような 欲のような

翼をいたわる 枝の先に

結んだつもりの 知恵のようなもの

邪魔なだけの 邪魔なだけの

 

どこまで分け入ったら 触れられるのだ

「うつくしい」と つぶやけるものに

呼び合う魂が はしゃぎたがって

「うつくしい」と 寄り添える誇りのようなものに

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